そういえば、最近三次元でもBLファンタジーを脳内で構築するようになってしまったことに、ふと気がついて驚愕。ついにウィルスはここまできたかと、1人で苦悩してます。
綾瀬は事故の後遺症で、高校時代に死んだ初恋の相手・萩生の幻覚が見えるようになった。彼が見えなくなることに寂しさを覚えつつも、初恋を引きずる綾瀬は仕方なく目の手術を受ける。しかし、郷里に戻ると再び目の前に萩生が…?昼は高校生、夜は大人の姿で訪れる彼に綾瀬は胸を焦がし…。他4篇を含む、切なくて可愛い珠玉の短編集。描き下ろし付。
もう読んだのが数ヶ月も前のことだったので、改めて読み直したのですが、やはり良い作品は何度読み返しても感動が薄れることはないなあ。
どぴゃーと感涙するわけではないですが、ジンワリと染みわたる余韻はそういうものにも変えがたいものがありますよね。
実際そういう作品は以外に出会える機会って、滅多になかったりするものです。
ただ有り難い事に、BLブログの先駆者さまさまたちが色々とレビュしてくれているので、大変参考になっているのが本当のところなのですが。
それでも自分の手元にそんな作品がきたときは、もうハッピーこの上ないです。
まず表題の「初恋の病」。
あらすじにも書かれているように、高校時代の初恋の相手が事故の副産物として見えるようになってしまうという、そんなすごいことがあるんだというところから始まるのです。
「シャルル・ボネ シンドローム」というそうです。なんとなく聞き覚えがあり思わず調べちゃいました。
『
Metaphilia』というサイトでそのシンドロームのことをこのように解説していました。
<「実際にはないものが見える」症状を呈す患者たちの存在が知られている。これは視覚障害を持った老人にはごく普通に見られる症状であり、幻覚が見えるという事実を隠そうとしている人々も数多いと報告されている。ある調査では視覚障害をもつ500人の内60人までもが幻覚を認めている。
このシャルル・ボネ・シンドロームでは障害によって欠損した部分の視界にありありとした幻覚が描かれる。ミニチュア模型のような二人の警官が見えるという患者、ドラゴンや妖精といった架空のものが見える患者、また幽霊のような人影や、子供の姿とともに笑い声まで聞こえる患者もいるという。また脳を損傷した事故直後から幻覚に悩まされていた27才の患者においては、会話をしている博士のひざの上に猿が鎮座しているのが見えていると語った。幻覚のイメージは白黒やカラー、静的なものや動的なものと様々だ。そしてこれらの幻覚はときに現実のものよりもリアルであるという>(
Metaphilia:第一部「心と脳」参照)
確か「
脳の中の幽霊」という翻訳本もありますよね。うん。
―そしてこれらの幻覚はときに現実のものよりもリアルであるという―…人間の脳というものは、計り知れない力を秘めている。それが何を意味しているのか深く考えると、怖くなりますが、人間に必要であって必要でない力が起こる奇跡というものに興味を引かれるのも、人間の愚かさなのか、貪欲さなのか。
ちなみにこんなにディープな内容のストーリーではないです。上記のことは、森が勝手に興味を持って調べただけです。スミマシェンvv
この作品はちゃんとBLファンタジーにミックスされて、別の世界へと連れて行ってくれます。
この題材をBLに入れるというところが、すごいですよね。下手すると安っぽくなりがちで、いいように使われガチですが、トジツキ先生の画とストーリーで切ないBLファンタジーに仕上がってます。読んでいて、本当にジンワリときました。
高校時代の初恋の相手が、二十年もたって事故の後遺症というカタチで目の前に現れる。
それが、かえってその相手が二十年前に亡くなったということを、リアルにさせる。相手に気持ちを告げることが出来なかったことを、リアルに後悔させる。幻視とわかっていても、高校生のままでいる初恋のキミに、まだ心を奪われている自分は目の病気じゃなくて、初恋の病だ。
37歳になっても、まだ二十年前の初恋を引きずる綾瀬の気持ちは、誰しも抱えることなんじゃないですかね。初恋って、きっと死ぬまで淡くほろ苦く、そして切ない。
自分は年をとっているのに、想い出の初恋のキミは当時のままで、いつまでも屈託のない笑顔と幼さ残る笑い声が耳について離れない。
手術によって、その幻視はなくなるのですが、それは初恋を引きずる自分を変えるためにおこなったのです。そして、初恋の相手が亡くなった地に二十年間戻らなかったのですが、手術を機にその土地に戻ることを決めます。
そこで暮らし始めて、もう幻視でも見えなくなった初恋の相手を幽霊でも会いたいと願ってしまう自分の初恋の病は、重病だと気がつく。それほどに好きだったのに、想いを伝える前に亡くなってしまった相手を恋しく想うのです。
そんな綾瀬の願いが神様に通じたのか、目の前に高校生のままの初恋の相手・萩生が現れるのです。
この綾瀬という人物の、優しい切なさや儚い願いが、読むほどに胸に水滴を落とすように少しずつ胸を締め付ける。少しずつ、けれどきちんと落ちる場所をわかっている。
そんな絶妙なバランスで話が進んでいくのです。
読み終えれば、ありきたりな展開なのかもしれませんが、そこまでもっていく過程が素敵。
繊細で叙情的で、可愛くて。
なんだか表題作だけで長々と書いてしまったので、他作品は簡単に(え?。
『列車で始まるミステリー』…コミカルです。ちょっとしたミュージカルチックなお話。鉄オタが絡むとはねえ。オーバーリアクションの作家に笑える。
『きつねつき』狐筋という神主のような家柄を継ぐ少年とその眷属・狐の話。力がなくなればもう少年と話すことも力を使うことも出来なくなる狐が、少年との残り少ない時を過ごす。途中、狐の言葉で少年の寝顔を見ながら「わしは、人にはなれんのかのう…」と呟く場面で、グッときた。涙。
『木草弥生月譚』音大生のヘタレピアニスト後輩と孤高の天才ソリスト先輩のお話。
ヘタレの後輩くんが兎に角可愛い☆ラストページの先輩の顔がかっこいいですな。
『幸せな人』これはかなり異色な作品なのかなあ。BLはBLなんだけど、終始可愛いなあという感想で終わりました。別に嫌いではないですよ。まあ4年もまった大ちゃんの純情っぷりのほうが、可愛いですよ。絶対に。
『絶句』これは!やられたっ!!と感じる作品でした。ちょっとかっくいいーと思ったりして。読み終わったあとに一人五七五をやった人は少なくないはずだっ!っていうか、私はやった。苦笑。
かなりお気に入りの一冊になりましたし、私の中でトジツキ先生の位置は確固たるものになったのは言うまでもありません。
あ、言っておきますが、エロはありません。
そんなものがなくても200%楽しめる作品揃いです!!
昔の切なく甘い、大切な何かを思い出したくなったら、ぜひお読みくださいませませvv

コメントを投稿