Amazonから届いた…嬉しくて、我慢してた上と合わせて一気に読了。
ちょっと放心状態です。
人として美しくあるべきこととは、果たして何なのでしょうか。
久々に切なさのあまりに、読む手が震えた。とにかく優柔不断な男なんてっとコンチキショーと怒鳴りたくなった。苦笑。
以下ネタばれあり↓
ああもう、兎にも角にも人を好きになることってなんなのでしょうかね。
人を好きになるのは心ですか?それとも……。松岡洋介は週に一度、美しく女装して街に出かけ、男達の視線を集めて楽しんでいた。ある日、女の姿でナンパされ、散々な目に遭い途方に暮れていた松岡を優しく助けてくれた男がいた。同じ会社で働く、不器用、トロいと評判の冴えない男、寛末だった。女と誤解されたまま寛末と会ううちに、松岡は「好きだ」と告白される。友人になりたい松岡は、女としてはもう会わないと決心するが…。
確かに異性でも同性でも、初めはすべて「見た目」から入ることは否めない。それってどんなに言い繕っても、誰しも視覚から入る情報は強烈にその人の個性を印象付ける。
初めにいいなと外見に魅かれて、その人のことをもっと知りたいって思うことは普通だと思う。
そこまでは異性も同性も関係ない。でもそこから先に芽生える深い貪欲さって、例えば自分がノーマルであれば相手が異性というカテゴリを持って、初めて成立する感情だ。
それがゲイとか同性愛者であれば、そのカテゴリが単に同性と変わるだけでこの一般的定理から外れることはないと思う。
しかしこの話は、結果的に受けとなった松岡も攻めとなる寛末も本来はノーマルであるということが、この通常の定理ではうまくいかないというジレンマが生じる。
ストレスから女装癖を持つようになる松岡と、その彼を本物の女性として愛するようになる寛末。
最初は興味半分で、女装の自分に好意を寄せる寛末に近づく松岡。
口べたで不器用な自分に興味を持ってくれた美女に逆上せていく寛末。
松岡はそんな寛末に持つ感情が、ただの興味から段々と違うものにシフトしていくことに気が付く。そして早い段階でそれが恋愛感情だとわかる。気がつき、マイノリティながらもその自分の同性に対する想いを認めることができた。
でもそれは、自分が女性ではなく「男性」であるとわかっているからで、女装をしているのは自分であると(当たり前だけど)知っているからだよね。
逆に寛末は、松岡から事の真相告げられるまでは、ずっと松岡の女装する人を一人の「女性」として想い焦がれてきたわけだ。ここが根本的に全く違う。
松岡が本当は自分の女装した姿を寛末が見てきたと打ち明けるまでに、色々な意味で当人も葛藤をするのですね。
松岡はすでに同性だとわかった上で、寛末のことが好きで好きでどうしようもない。けれど、相手は自分の女装した幻の女性を愛しているのが手に取るようにわかっている。騙していてはいけないとわかっているので、打ち明けたいが、嫌われたくない。
女装の松岡は何度も寛末に聞くんですよ。「どんな姿になっても好きでいてくれるのか」と。すると「お婆ちゃんでも子供でも、どんな姿でもこの気持ちは変わらない」と寛末は言う。
この言葉で松岡は打ち明けることとなるのですが、でもこれってすべて「女性」であるということが大前提であるんですね。そりゃそうだよなとも思うけど、ものすごく残酷なことでもあるんですよね。だって、それだけですべてを否定されるんですから。
初めてここで寛末は、自分の愛した相手が男性だったということを知ることになる。
想像してみてください。
確かに寛末はこれから酷いことを散々松岡にしてしまうのですが、もし自分の立場が寛末だったらどうなんだろうと。やっぱり同じくらいショックだろうし、悲しいし、多分相手の気持ちも汲み取れないくらい自分だけの悲哀に溺れてしまうと思うんですよ。切ないけど。
でもそれにしたって、寛末は残酷なまでに松岡を振りまわす。
勝手に男は無理だといって突き放しておいて、松岡の影がなくなるとやっぱりといって近寄ってくる。
なんて男なんだと、思わず握った拳が震えます。苦笑。
いくら口べたでも、いくら頭悪くても、いくら不器用でもっっ!!!
言うべきことは口に出せっ!
相手の気持ちを考えろっ!!いくら同情の余地があったとしても、寛末の行動は酷過ぎる。
もう松岡の心情を考えると切なくて、切なくて、読んでいて所々で涙で霞んでしまうほど。
女装していた自分との決別、はっきりと自分は男であって幻の女性ではない、ちゃんと本当の自分は松岡という男なんだという思いで、髭を伸ばしたり、伊達メガネをかけたり少しでも女装をしていた自分と今の自分は違うんだということを誇示したんだと思うんですよね。
それでもそんな松岡に、あくまで「男」だからというどうしようもないという理由を持ちつつ、はっきりと決めかねる寛末がなんとも憎たらしいっ!何様なんだ!?ああもう切なくてどうしようもないこの出口のない濁流は、どうすればいいのか…どこへ向かえば許されるのか…
美しいこと下のラストに、松岡の悲痛な叫びが聞こえます。
「お願いだから……俺が寛末さんを好きだってことを、逆手に取らないで」もう!本当に泣いたって。
お願いだから寛末〜と、こっちも懇願したって話です。苦笑。
この話は「愛しいこと」に続きます。
ここでも寛末はものすっっっっごぉぉぉぉっく松岡に酷い仕打ちをしやがるっ!!
もう痛くて切なくて可哀想で松岡に、こんな男辞めちゃえと声を大にして言いたくなる!!
本当にどうしようもない男なんですよ寛末めっ!情けない男すぎるっつうの。
自分で無理とかまたしても切っておいて
やっと
やっと、
やっとですよっ!「好き」という気持ちが、一人の人間を愛するということがどういうことなのかわかるんです。
おせーーーーっっつの。
人として相手を「愛しい」と思えることは、とても美しいことです。
崇高なものであって、一番大切なこと。なくしてはいけない想い。消えてはならない感情。
人が人として生きてく上で重要なファクタであると考える。
そこにはなんの隔たりも壁も溝もないんです。
もちろん、年齢も性別も容姿も。私はそう考えるし、そうありたいと願う。
「好き」である、「大切」である、「守りたいもの」である、「愛するもの」であるそのすべての感情はとても美しいことなんです。
このことに気がつくのに、どんだけ寛末は松岡を傷つけたことか。
もうホントに最後の最後の最後でも、よかった…松岡が報われて…涙。
きっとこの二人はバカップルになればいい。
そんでもって、寛末は骨抜きになっちゃえばいい。
ここまで切なくてどうしようもなかったの久々で、読了後はしばらく放心状態だった…
まだ1月だけど、すでに今年の作品でトップクラスになっちゃいそう(笑。