思いのほかディープな内容になったT●L旅行であったが、その新幹線中で読んだのもまたBLであったということは言うまでもないのだ(笑。 おいおい、二人で行ってるのに何してんだよというお叱りの言葉は無問題。なにせ同行者は腐女子仲間のNさんだし、ちゃんと相手が爆睡しているときだけ読んでましたからね〜
買っておいたのに、今更に読みました(笑。 どんだけ〜
三年前から突然人の心の声が聞こえ始め、以来人間不信気味の余村。ある日彼は、自分に好意を持っているらしい同僚の長谷部の心の声を聞いてしまう。罪悪感を覚えつつも、...
最近の映画では 「サトラレ」 というのがあったよね。確か安藤政信さんが主演で。あの映画の人は知能が高いという設定だったと思うのだけど、こちらは突然に神からの試練のような出来事。どうして?というところは言及していないので、文間やそれらしき言葉から読み取るしかないのだけれども。
作者はあとがきに犬の生態を見て思いついたと書いてあり、作中にもそれをキーワードになるような文章も書かれている。確かにそうだよなと至極納得。動物は自分身を守るために、特殊な能力を際立たせるものだけれど、「言葉」という最大にして最強のコミュニケーション能力を得た人間にとって、それはすべて「表」と成りうることなんだよね。「表」が存在するということは、まさに「裏」も存在するのだけれど、それを普段私たちは忘れがちだったり、言葉に出てこない分、知らなくてもよい部分だったりする。だけど本当はそういう「裏」の聞こえない言葉や思いが大切なことで、そちらを慮ったりすることこそコミュニケーションにおいては重要だったりするもんです。
でも、目に見えるもの、聞こえるもの、形あるものに頼りすぎて生きてきた人間にとって、それはとても難しいし、逆に驚異に感じること。主人公の余村も驚愕して驚異に感じたのは言うまでもないこと。そりゃそうだよ。「裏」の中にストッパーは一切ないし、「表」に出ない限りその思いが日の目をみることなんてないんだもん。「口先八寸〜」とか言うように、「表」の言葉というものは、「裏」が見えない分いくらだって装うことができるもんです。その装いが剥がされたその下に本当は何があるのかなんて野暮なことは通常しない。道を歩いてる人みんなが素っ裸で歩いてるようなもんなんだよね、余村にとってはさ。そんな現状を受け入れない余村の行動は至極当たり前。制御できない濁流の渦に飲み込まれないように、必死に耳を塞いで生きていこうとする姿は共鳴する。
そんな余村に好意を持つ相手の声が届く。それが長谷部なんだけど、「表」の長谷部は無口で無表情で、所謂取っ付き難いタイプの男性。無論、ここで好意を持ってくれた相手が男性でしたってとこがBLファンタジーの美味しいとこだね。でも逆に男性だからこそ、心強く思えたり真摯に受け止めてくれてるような雰囲気を醸し出してたりするのだから、ファンタジーの世界は実に奥深い。
言葉で発しなくても、相手のことがわかってしまうのはとてつもなく切ない。怖い。ただ、この長谷部に関しては、本来無口で…という設定だったために、上手い具合に「裏」の心の声に響く純粋な余村を思う気持ちがダイレクトに伝わり、逆にハートを射止めたということになる。この辺りのストーリー展開や人物設定が非常に上手なので、読み手はなんの違和感も抱かずに余村と同化しつつ感動させる手腕はさすがです。
好きになればなるほど、相手の本当の気持ちが知りたいと思う反面、聞きたくないとも考えてしまう恋愛ジレンマのような思いは、誰しもが抱くことですが、そんな選択の余地がない余村にとって長谷部との恋愛はそれさえも乗り越えた先にあったものだったということなのか。見えない・聞こえないからこそ、心の底から相手を思いやることの大切さ、みたいなことを感じ取れた余村は、人間として忘れてはならない大事なことを思い出したのかもしれません。
互いの想いが通じ合ったとき、余村はこの不思議な能力から解放されるのですが、そのことによって、また新たな試練が彼に襲いかかるのですが……
ずっと実直に余村を思い続けてきた長谷部にとっては、「表」も「裏」も関係なかったんでしょう。でもそれが本当の恋愛なのかもしれない。色々と考え込むことや、駆け引きめいたことをすることもある。だけどこの作品での二人の恋愛は本当に「ピュア」 という言葉がピタリと当てはまる。
この二人を見ていると 「嘘は恋愛のスパイス」 だなんて言う人を、そんな言葉はゴミ箱に丸めて捨てておしまい!と捨て台詞をはきたくなりますな。腐腐腐。
持ちうる能力に頼りがちなるけど、本当はそうじゃないんだよと教えてくれるような作品です。まさに夢の国に相応しいほどに、切なく、そして素直な想いが何よりも尊い、ということを教えてくれたのね〜。このチョイスはドンピシャでしたわ(笑。
甘い話とは一味違う「ピュアラブ」を堪能できる1冊でした!

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