先月末(といってもつい数日前)の新刊購入した本は、吃驚するほど良作揃いだった。今年は年初めから結構ハズレなしでここまできてるけど、なんだか恐いくらいにいい本にめぐり合えて浮かれ気味な腐女子です。
一気に新刊読破してたくさんレビュしたいけど、とりあえずはお気に入りから。
あとがきやHPで、この作品を執筆中に何か色々とあったようなことを書いてあるけど…まさか、しばらく書かないとかなるのかなあ。
麻倉征、19歳、大学生。彼には8歳年上の同居人がいる。ひとり暮らしをする征に父親が寄越したお目付役・瀬尾篤史だ。幼い頃から傍で自分を見守ってくれていた瀬尾と数年ぶりに一緒に暮らすことになった征だったが、瀬尾に対してどうしても素直な態度を取れない。かつて征にとって誰よりも大切な存在だった瀬尾。だが、ある時を境にふたりの関係は大きく変わってしまっていたのだ……
もうシツコイくらいに言ってるので、またかと思うでしょ(笑。
いいです。それでもいいんです。だって好きなんだもーん。
相変わらずとても滑らかでいて過剰すぎない描写力で、読み手に気負いを持たせることなくストーリーに入り込ませてくれますね。
時代設定はもちろん現代での話ですが、もっと昔、大正・明治などの華族にも使えるような内容なんですよね。お金持ちのお坊ちゃんの子守役が目を離したときに勝手に登った木の上から落下、天才的なピアノの才能を持ちながらもそのときの怪我が原因で、二度と以前のように弾くことが出来なくなってしまった。それに強い責任を感じた子守はずっとお坊ちゃんのそばにいることを決意する……みたいな……ね?これはもう普遍的な従僕愛的な要素たっぷりなわけ。
なんだ、ありきたりじゃんと思いますが、侮るなかれ。そこが椎崎本です。ちゃんとスパイスの効いた捻りを持って、話に深みをつけてくれてるのですよ。この本では怪我をおった側、つまりお坊ちゃん側に位置する征よりも、子守、つまりお目付け役の瀬尾の方が断然力を持っている。但し、それは表面上なことであり、立場的なものだったり年齢的なものだったり、と見えてる理由はそれなりにある。もちろん根本的には雇われてる身なのは間違いないわけで、征ありきでの強固な態度を、まさに執事とボディーガードをかねたような役割でソバにいるわけ。
それじゃあ征が弱いのかと言ったら、そうではない。表立って別に瀬尾の言いなりになっているわけでもない。ひとつ言われれば10にして引っ掻き回してから返すくらいに反抗的。でもそれには彼なりにずっと悩み続けてきて庇い続けてきた一つの塊があるわけ。必死にそれを身体を張って守ろうとしている捨て身な状態が、結局はその感情をコントロールする手段を知らないあまりに、痛々しいまでに思えるほどに反抗的な態度となってる。
これが瀬尾にも言えることなんだよね。瀬尾も小うるさいほどに征の世話をするんだけど、これがすべて感情を押し殺したような、まるでサイボーグの如くな仕事っぷりなわけよ。何を考えているのかまったくわからないこの男は、それでもいつも征を正しい道に進めるべくして、かなり厳しく接する。厳しく接すれば征は反抗する。かといって素直には決して征はならない。征が高校にあがるまで、2人は本当に本当に仲が良かったという設定だからこそ、この対立の奥に潜む悲しい闇に触れたくて、こっちも文脈をドンドンと追っていく。
「保護される」男と「保護する」男。でも、「保護される」男は「保護する」男にそんな風に見て欲しくない。そんな立場で自分を求めて欲しくないと望んでいる。けどそれが叶わぬことだと知っているから「保護」という不本意な言葉を介してまでも立場を受け入れようと足掻きながら模索する。
互いの独りよがり的なものがあるにせよ、先に怪我があって、上下関係があってだからこそ、好きだという感情だけではどうすることもできなような障害がクリアに見えてしまったりすると思う。そんな懐疑的な感情というものは、ときにパワーバランスの取れていない恋愛には必要であり、また普通に考えてもそれが伴わない恋愛感情など正直ないと思う。ということは、
結局それを陵駕するだけの強固な想いが、捩れた形を持ってしても相手のソバにいられる状態を作り出したいと思い至れば、まさにこの2人が置かれている状況になり得るんだと納得できた。歳の離れた恋愛だからこそ、互いが互いに自信が持てない。ことに、この本では征がまったく自分自身を好きになれないで、ずっと傷つき心を痛め続けてきただけに幼い印象を持つことは否めない。けど、それでも後半になり本当の等身大の自分を見つめ直すことができ、ずっと身体を張って守ってきた感情を吐露することにより恋は実ることになる。そんな征の山あり谷ありな成長過程が、椎崎言の葉によって非常に痛々しくもあり、それでいて微笑ましくもあるような素直な表現で心に響いてくる。押し付けがましくもないのに、ここに書かれている道しかなかったよねと頷けるほどの文章力は、本当に特筆していると思ってしまうのは、椎崎ファンならではの贔屓目かな(笑。
結局サイボーグ瀬尾は、ものすんごくシツコイ野郎だ!ということがわかるラストだけど、本当によくできてますよ、この話。まあ正直言えばもう少しというか、かなり枚数が足りなかったような気がするけど、こればっかりはなあ。今までがきっちりと外堀を固めて書かれてることが多かったから物足りなさは感じたことなかったけど、今回はもうちょっと家族の柵とか過去のこととか欲しかったような気がするよ〜。でも、面白かったからいいけどね(笑。
本当に何度も言うけど、言葉使いが上手いよ。特別に激しい山場もなく、いつもとおりに淡々と静かに進むんだけど、いい意味で期待を裏切ったりしてくれるから、ホントすんなりと入ってくるんだね。……ここまで言うと、もうただのファンの戯言だなあ。苦笑。

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