今日はブログペットのむんに「がっついて飛びついた?」と言われた森です、こんばんは。
確かにがっついて飛びついたよ、アイスクリームにね。フン。
だって今日も暑いかったよ〜ムシムシしてちょっと動くとじっとりと汗ばんでやな感じよ。もうじき梅雨時期だから、鬱陶しいなあ。
さて、今回の杉原本。もう私的には大当たり!今年のベストに絶対入る!!
平熱が低い私は、恥ずかしながら37℃出たら寝込むほどシンドイです。
「悪いんだけど、俺をしばらく泊まらせてくれないか」 銀行に勤める野田に突然掛かってきた数年ぶりの電話。それは、大学時代の野田の秘密を共有する男、若杉からだった。泊めることを了承してしまえば、面倒なことになる… そうわかっていながら、野田は頷かずにはいられなかった。とっくに終わったはずの関係だ…… それなのに…? 静かな熱病のような恋が始まる――!
野田の一人称で進むこの話。大学生のときに出逢い、その10年後に再会する。出逢った頃に感じた熱を鬱陶しく思っていたはずなのに、なぜか忘れられずにいたのが若杉という男だった。
野田という男、これがかなり屈折した心の持ち主だったわけです。学生時代に会った若杉に惹かれていながらも、自分の中に芽生えたその感情を「悪」だと決め付けあくまでも自我をマジョリティであると律しようとする。実際若杉とは身体の関係を結ぶのだけど、野田にとってその行為をしている自分は「悪」であると位置づけ断罪するべき対象とする。純粋に野田のことが好きな若杉とは、まったく向かうベクトルが違いすぎてしまっているのね。
若杉は自分と付き合う相手と素直に向き合える男なんです。だから決して裏切ったり哀しませたりはしないようにする男。好きだから望むことはすべてしてあげたいと思える奉仕心を持ち合わせているのです。若杉自身も非常に痛みに敏感なんだよね。傷つき傷つけられることを恐れるが故に孤独を恐がるのです。だからこそ、若杉のような優しい性格が生まれたといってもいいかもしれないですね。若杉は野田が好きだった。だから傷つけたくないし野田を好きになることで自分も傷つきたくない。そんな想いから野田の目に余るような自我を蔑む行動や発言を、懸命に理解しようと努力するんですよ。でも結局は最初からベクトルが向き合っていない関係だったわけだから、交わることなんてなかったんだよね。結局は若杉は自分が恐れていた孤独を選ばざるを得なくなってしまった。
でもそのときに感じた互いの熱は存在していて、別れた後も決して忘れることができなかった。
10年後、突然の再会に戸惑う野田なんだけど、若杉を目の前にして改めて自分がこの男との関係に持った熱に気がつかされることになる。その熱の名前や正体を探るように、自分本来の根底を見つめ直し始める。若杉は若杉で、やっぱり野田のことをずっと引きづった10年間だったんだよね。若杉は本当にいい男ですね。寂しがり屋で、でも優しくて正直で、そしてちゃんと野田の屈折した部分までをも受け止めようとしてくれる。作中で若杉も連呼しているほど、野田は非常にわかりずらい男です。でもその度に「どうしてほしいんだ!」とちゃんと言葉に出して野田に投げかける。妻と別居中の野田と、付き合っていた男と別れたばかりの若杉。若杉の変わらない人間性に、やっと野田自身も忘れられなかった熱の意味に向き合うことができるんですが、そこまでいき付く間の野田の葛藤描写が本当によく表現されてます。
この野田が学生時代から再会後、変化していく心理描写が非常に繊細に書かれていて申し分ないです。野田はズルイ男です。でもそのズルさは、決して誰しもが否定しきれない部分で構築されているのです。だからこそその葛藤が苦々しく思いつつも悲しみを誘うものになっている。野田も作中で、そんな自分の断罪されたがる根底にヒッソリとあるのは本当は美しいものだ、と言っている。その美しいものは「祈り」にも似ていると語るその野田の心情は、マジョリティでありたいと考える人間のエゴに埋もれてしまっている「慈愛」そのものだと思う。
ラストの章はその野田がずっと捨てられずにいたエゴの部分を、他人から突きつけられた形になりかなり読んでてショックでしたね。でも最後にその問題が露見することで、野田にとって本当に捨てなければいけなものは何なのか、本当に手に入れないとけないものはなんなのかがはっきりとするわけです。ここで野田がマイノリティとしての愛を貫いていくというスタートラインに立ったのだと思いました。ただちょっと野田と妻との関係性が脆弱だったせいか、妻には好きな人が出来てたのに薬を飲むか!?とは思いましたけど。
今回の作品は、良い意味で色々吃驚させてもらいました。この野田という男、確かに理解に苦しむこともありますがそれでもそれは許容範囲内。それを上回る圧倒的な心理描写で、若杉との温度差や野田自身の葛藤を書き出してる。時にはそれが己の声だったり、あるいは周囲の人間の言葉や出会いが野田の心にインスパイアされ、彼の中で消化し新しい変化として表現させる手腕は見事でした。野田の1人芝居的な話ではありましたが、帯にあるように、両想いなのに片想いという、慮ることばかり覚えてしまう大人の物語。杉原本の概念がかなり変わったなあって(笑。 かなり読み応えはあると思います。難問のようでそうでない、でも簡単でもない恋の話をたっぷりと堪能させてもらいました^^