![]() | 牛泥棒 (Holly NOVELS) (2007/06/29) 木原 音瀬 商品詳細を見る |
頃はまだまだ「日本」という国が、ある意味「日本」らしかった明治時代。
造り酒屋の一人息子・亮一郎と幼き頃より奉公していた使用人・徳馬。
幼少時代からお互いがお互いに好意を持っていたにもカカワラズ、道々ならぬ恋路に打ち明けることもできずに、大人になっていく。
けれど、それも亮一郎の結婚話がひとつのキッカケとなり、想いが届くことになって……
この徳馬という使用人には、人の目に見えざらぬものが見えています。
なんとなく「百鬼夜行妙」の律を彷彿させるような設定です。ちなみに亮一郎の母にも見えていました。
明治時代という枠が、そんなことまで当たり前のように感じてしまうような、いい背景になっていますよね。不思議を不思議と思えず、奇妙を奇妙と認めず、みたいな。
幼少時に亮一郎は病にかかり死にかけますが、それは取り憑いたモノノケのせいだということを徳馬は見抜いていたのです。
亮一郎の母にもわかっていた。
亮一郎を救うべく、母は山の沼に住む沼神様に身を投げて懇願し、それを見ていた徳馬は母を失った亮一郎を不憫に思い、せめて形見でもくださいと母を喰った沼神様に願い、その代償として今後20年間毎年牛を献上することを約束させられる。
おお。これでタイトルの意味がようやくわかることとなりました〜。
徳馬はそれから20年間、自分の声も沼神様との証文の代わりとして奪われてしまいます。
すべては大切な「亮一郎」のため。
すごい献身愛です。自分が犠牲になることなど、まったく厭わないという穢れなき想い。
誰に打ち明けることもなく、ただただずっとそばで使えて支えているだけでいいと思える。
切ないです。本当は互いに好いているのに、なかなか言い出せないでいる。
我侭で短気なお坊ちゃまの亮一郎が、本当に徳馬のことが好きで好きで、けれども相手が「男」ということと、相手の気持ちがわからないという「不安」という狭間で揺れて揺れてどうしようもない心情が、思わず「くぅ〜っ」となってしまう。苦笑。
P40で、亮一郎が酒に酔ったふりをして徳馬の膝で寝たふりをするんですが、そこの行動がなんとも言えず悶えます。
――亮一郎は体を傾けて、枕にした男の膝の上、下腹の帯に顔を押し付けた。甘えているふりで思いきり息を吸い込む。男の精の匂いがしないかと、邪な頭は考えていた――
いやー、想像しちゃうし。どうなの?この表現。的確すぎて、脱帽します。
毎年、牛を献上することを盗むという行為でしていた徳馬は、最後の20年目にして見つかり、牢屋に入ることになります。
それを知った亮一郎は、必死になって助け出そうとします。
そして20年前に失踪したとされる母の真相、突然と話せるようになった徳馬のわけ、牛を盗み続けていた理由、そのすべてを知ることになるのですが。
もう本当にドラマティックな展開(でも牛泥棒だけど……)で結ばれるのですが、本当に徳馬の健気でイジラしく、初々しい態度がもう、萌えて萌えてしょうがない。苦笑。
もうちょっと、褌って…(笑。
なんだろう。うん。とてもとても良かったです。
だって、この作品が、特段「BL」というカテゴリなんかに入れなくてもいいんじゃないの?っていうくらい良かったですよ。
「箱の中」「檻の外」でもそう思ったのですが、この作品もぜひ一緒にプッシュしたいです。
木原さんの作品は大好きですが、直近の作品になればなるほど、文章力(?)というかなんというか、そういったものがメキメキと上手くなってきている気がします(偉そうですみません)。
余分な贅肉がそぎ落とされて、必要な筋肉がしっかりと骨格をなしているというか、そんな安心感とかスタイルの良さみたいなものを感じるようになりました。
特にこの作品は良かった。無駄な伏線もなく、必要な言葉は添えられて、気持ちよく読み進めていくことができました。
なんだかこの2人のシリーズ(?)的な作品も読んでみたいなあ、なんて思ってしまったのですが、皆さんはいかがでしたかね?![]()
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